英国紳士に憧れて

格好いい英国紳士になるべく、日々の精進と思いをつむいで。主にホームズについて。

英国紳士を考察4「ドイルの描いた変人」

先日、ディオゲネスクラブについての記事を書いたところ、

原典においてはどれだけ変人の巣窟扱いをされていたかを確認すべく、

もう一度読み返してみた僕。

こういう作業を僕はよくします。

確認のため、時々原典は読み返すように記憶だけで話す事はあまりしないようにとしているのですが…

 

うん、変人だ! やっぱり変人だ!

 

確認終了。

いやー、よかったよかった。記憶どおり。

ということではなく、

僕が記憶していたよりも弟の
「兄は変人なんだよ、ワトソン君」
という紹介文が淡々としていて、久々にはまってしまいました。

 


シャーロック・ホームズの冒険 ギリシャ語通訳/ノーウッドの建築業者 (英日対訳ブック 特典DVD付き)


翻訳においてどれくらい意図と悪意が入っているかは計り知れませんが、

マイクロフトは絶対的に変な人で、そんな人たちはロンドンに何人もいて、

そいつらが創った誰とも交流しない社交場がディオゲネスクラブなんです。

 

ドイル氏は

「主人公であるホームズを変人として描いていて、そのホームズ自身が、『兄ほど奇抜な人間はロンドンにはいないよ』というわけだから、中途半端な描き方では、マイクロフトとういう変人の色が出ない」
とでも考えたんじゃないかと思うわけです。

 

ところで、ドイル氏はとてもこういった常人では思い付かないような団体を作り出すのがとても得意です。

SF作家でもある彼の才能といえるでしょう。

 

ディオゲネスクラブ
 人間不信な男たちがあつまる、誰とも口を利くことが許されない社交場

 

赤毛連盟
 赤毛の男しか入会することが出来ない簡単で単純な仕事をするためだけで赤毛だった大富豪(故人)の遺産から収入を得れる団体(モリアーティ教授による架空の団体)

 

三人目のガリデブ
 世界中であと一人ガリデブという名前の男を見つけてくれたら、三人で遺産を山分けしていいよと言い残した老人の話(出不精のガリデブ先生を外に出すための架空の話)

 

あ、『赤毛連盟』と『三人のガリデブ』って話の筋が実は似ているんだな。

 

たしかに、ホームズという人は興味のある事件にしか意欲を示さない人です。

ありきたりな捜査はでくだらないとし、依頼者の話すら聞かないらしいですから。

奇抜な事件を起こさない犯罪者に文句を言うくらいの変人ですからね。

ワトソンだって、ありきたりの事件ばかり扱っていたら相棒の手記として世に発表したところで、売れないだろうし(彼は医者という本業があるので、それで稼いでいたわけではないけども)。


しかしそんな人としてはどうなのかというほどの偏ったホームズをグラナダでは格好良く、英国紳士として描いているわけです。

すごいな、グラナダ
そしてすごいぞ、愛しのジェレミー!

 

ということで、原典を読み上げた結果、

グラナダ・ホームズが観たくなったというわけです。いそいそ再生。

 

ギリシャ語通訳』はDVD五巻。

だいぶ初期のタイトルなので、このときのワトソンは一代目となります。

残念なことに『ギリシャ語通訳』ほど初期になると、完全版には字幕が入っておりません。対応してないのです。

 

字幕なしではほとんど解読不可能となってしまう僕の英語力ですが、

原典を完全把握している成果が出ているのか、グラナダ・ホームズだけは英語での会話だとしてもヒアリングできるという偏った知識のまま、視聴しております。

どうしてこれで英語力が上がらないのだろうという謎、は置いといて。

 

NHK放送版にだけ日本語吹き替えがついているのですが、

これがまた残念なことにディオゲネスクラブにホームズとワトソンが入ったところから放送されています。その前のシーンはがっつりカット。

ワトソンがホームズに兄がいると知って驚くところも、ホームズが兄を褒め称えるけれども変人と呼ぶところも、君に紹介したいから今からロンドンで一番変わったクラブに出かけるよというところもカットされています。

したがって、ディオゲネスクラブではしゃべってはいけないという鉄の掟があるよといった詳細が視聴者に伝わらないままに、(冒頭にワトソン役の長門さんがナレーションして流してしまうアレはついています)ワトソンがかなり戸惑って、廊下を歩きます。

来客室に通されて、「もうしゃべてもかまわないよ」とホームズから許可が出ます。
「ああ、たすかった」というワトソンは原作を知らないと全くよくわからない展開です。


ちゃんと再現されているのに、かなり残念。ディオゲネスクラブの部分だけでもちゃんと放送してほしかったところ。そう、この変人クラブ好きの僕は思うのです。サスペンス部分が要点なのはわかるんですけどね。

そういった意味では、BBCのシャーロック(劇場版)で再現されていたこの変人クラブはとても忠実でした。受付では手話で会話してるし。

ん? 会話をしてはならないってそういうことなのか?

そして無言ながら手話している三人はだいぶうっとうしい事実(一応コメディ部分だったから余計アクションでかいけど)

…本来のクラブのあり方とはだいぶ違うのかもしれないと今気付いてしまった。

そうだよな、絶対無言の聖域において、喋ってはならないからといって、ダツダツと体を揺らして警備員を呼ぶシーン、これは違うということには気付いていたんだから、そこにも気付くべきだったよな…。

 

いろいろ見返すと、ドイルの描き出した変人達が判ります。

そしてそれを愛して表現している変人にも出会えます。

 

楽しんでいる僕も、やっぱへン人だ。