凡人が憧れて11 ~偏っているから成り立つブログ~
偏愛マップというものをご存知ででしょうか?
偏愛マップ―キラいな人がいなくなる コミュニケーション・メソッド
その人が何について熱くなるか、普段クールでもの静かな方だけど、あるひとつのことについて話したらすごい食いついてきた!というように、人間はなにかしらにのめりこむものを見つけています。
その一本をまったく面識のないあかの他人が釣り上げるのは、えさを仕掛けてずっとその人が食いついてくるのを待つばかりなんですよね。
そこで、何なら自分の好きなものを先に提示してくれよという意図なのが偏愛マップ。
書籍も出版されています。調べてみると数種類。そんなに知名度の高い言葉だったのか。
ご興味のある方は読んでみてください。
簡単に言うと、アメトーーーークです。
○○芸人としてあつまって、熱い話をしましょうよという企画です。
油揚げ芸人とか、チョコレート芸人とか、この人がその食べ物や物事にどのくらいハマっているのかは、企画してみないと判らず、集めてみないとどんな話が出てくるのか判らないわけです。
なんならマツコの知らない世界でもいいです。
「それ」にだけ異常な愛を注ぐ人で番組はなりたっているし、人気番組にもなるということ。偏った、愛です。
さて本題。
自分の偏愛マップなるものを作成してきた若者が僕にそれを見せてきました。
初対面の人との話の取っ掛かりに困らないように持ってるらしいです。
好きなことがまとめて5個くらいずつカテゴリー別に書かれています。
「へー、○○が好きなんだ。じゃあさ、あれ知ってる?」
と、確かに相手の知識もちょっと引き出されて、次の会話に繋がるというのが狙いなんですね。
手渡されたそれを読んで、僕はしばらく沈黙しました。
何でこんな餌にパクっとくいつかなければならないのか!
仮にうっかり食いついて、その相手よりも僕の知識が上だったら場の空気とか悪くなるだろう(過去に経験有)。
そして逆に熱く語ってこられても、かなり困る。
かぶせ所も引き所もこっちが手綱を持たされることに変わりないじゃないか。
すでに会話が繋がってない時間を経て…。
天邪鬼な僕は、無難に話を打ち切れそうな文言を探します。そして見つけてしまいました。
【好きな本:シャーロック・ホームズ】
う…。
確かに無難なチョイスですよ。
読書好きなら一回、もしくはシリーズのひとつくらいは読んでいるだろうし、推理モノという意味でもテッパンカテゴリーだし、世界中にファンがいるわけです。
そんなに詳しく知らない人でも一盛り上がりくらいはするだろう予測はつきます。
「僕も小学校のころ読んだなー」
とかね。これが怪盗ルパンであれば、仮に読んでいなくても、
「僕はもっぱら三世の方しか知らないなー。アニメはよく観てたよ」
とか、話を膨らますにはもってこいでしょう。
しかし僕にその単語を見せてはいけないのです。
だってコイツ、偏っているんですから!
うっかりパクっと食いついちゃったら、このブログに書いているくらいのうっとうしさ全開の、限界MAXの話が始まってしまいます。
引くに引けない駆け引きが、絶対に負けられない戦いがそこにはあります。
いい餌落とすじゃないか…。
しかもこれは疑似餌である可能性が高い。
僕の方が愛に満ちていたら、いや多分僕の方が満ち満ちている気がする…。
間違いなく疑似餌だ! 混ぜるな危険!
僕の脳内に宿るちっちゃな英国紳士が警鐘を鳴らします。
触れちゃいけない、コレには!
そして見つけた、唯一かじって良い、果実。
「あ…りんご、好きなんですね」
「はい。」
「…」
「…」
終了。
会話は続きませんでした。
問いたいことはただ一つ。
本当にあなた、りんご好きですか?
リュークくらい好きですか?
※意味の分からない方は、こちらをどうぞ。
初対面の人との話の取っ掛かりの前に、話のつなげ方を学ぶべき若者への、せめてもの思いやり。