凡人が憧れて1
英国紳士に憧れてはいますが、
事実僕は凡人ですので、「憧れ」を強くしていく以外に方法はありません。
目の色も黒いですし(カラコンで何とかなりますが)、
髪だって真っ黒(染めれば色はどうとでもなりますけど)、
平べったい顔の国の人々生まれなので(テルマエロマエ風に)、
英国紳士なるには、ドラえもんクラスの便利ロボットが、いい感じのアイテムを出してくれる世の中になるまでは、まだまだ無理でしょう。
仕事でスーツを着る機会はありますが、年に数回しか着ない職業につきました。
もちろん燕尾服など着るような日常を送っていませんし、社交界デビューもすることは未来永劫ありません。
そんな日常ですから、憧れの紳士の生活に近づくためには思いついたことをできる限りやっていた過去があります。
一番最初に憧れたのは茶器でした。
元来の凝り性により、紅茶に関しての勉強をして、
良い茶器と、ケーキスタンドを購入。
形から入る性格が、災いしてしまい、ホームズ先生にいそいそと食卓準備をする、下宿屋の女将・ハドソンさんに勝手にならいまして、ヴィクトリア朝時代に使われていた、内側にも外側にも装飾が施されるティーカップを購入しました。
現在はウェッジ・ウッド傘下に入ったとのことですが、「ブルー・マンダレイ」が小道具として使用されていたようです。
あ、買いました。
こちらの茶器は、実は本編中でしばしばぞんざいな扱いを受けています。
テーブルに置かれたティーセットを
「さっさと片付けて下さいよ、ハドソンさん!」
と資料を広げるスペースがないことにいら立つホームズに、邪魔な扱いとされます。
テーブルいっぱいのセット一式をせっせと片付けるハドソン夫人の女将としての姿。
僕は茶器とセットで大好きです。
ハドソン夫人が、下宿人である二人に出す茶器ですから、つまりはこのセットの趣味はハドソン夫人の嗜好品となるのです。
センス良すぎですよ、夫人!
購入をきっかけに、紅茶道に突き進みました僕は、茶葉なども買いそろえるほどの道楽に走ってしまいました。
ちょっとだけ高価な茶器と、気分によって変える茶葉、つまめる軽食を三段のケーキスタンドに一口サイズでちょこちょことのせて味わうティータイム。
凡人がちょっとだけ憧れた英国紳士に近付けた瞬間です。現代ではオシャレ女子がリッチな気分を味わうためにアフタヌーンティーを楽しむのだそうです。
そもそも、ハドソン夫人のセンスの良さにはどうにも勝てないし、そんなに尽くしているのにぞんざいに扱われてもため息で終わらず夫人の寛大さには感服してしまいます。
僕という凡人は、英国紳士にもなれず、夫人にも一歩も近づけないようです。