迷作『シャーロック・ホームズ 伯爵令嬢誘拐事件』
とてもとても昔の話で恐縮ですが、
NHKでグラナダ・ホームズが毎日のように放送されていたころの話です。
世間的にはファミコンが現役のツールでした。
家にはどんなカセットがある、何をクリアしたと毎日話題に上がったものです。
当時異常量の書籍を読破していた凡人少年も、ゲームに時間を割きました。許される限りの時間、ゲームと読書に使っていたのです。曲がった大人が育つはずです。
ファミコンの中でも、推理アドベンチャーは人気ジャンルでした。
英国紳士に憧れた少年の蔵書も、ホームズ読破後は推理小説ものばかり購入してしまう傾向にありまして、流れで推理アドベンチャーにも手を出しました。
そして禁断のクソゲーに出会います。
『シャーロック・ホームズ 伯爵令嬢誘拐事件』
【中古】 FC シャーロックホームズ伯爵令嬢誘拐事件 /ファミコン 【中古】afb
1986年の発売。
大好きなホームズの名前が入っている、しかも【誘拐事件】というサブタイトル。
それはもうジャケ買いしてしまいます。
当時の子供にはそれはそれは、ファミコンソフト1本の購入は高価なもので、
お年玉で何とか!
クリスマスプレゼントでやっと!
という、特別な手段で購入するような代物だったのです。
それなのに、持ち前のコンプリート精神が発動したらしく、タイトルだけで考え無しに買ってしまったこのソフト!
プレイして驚愕しました。説明書を読み返すくらい驚愕しましたとも。
まさかのアクションゲーム!
そして仰天するほどのゲームバランスの悪さです。
ストーリーは、犯罪組織に誘拐されてしまった令嬢の救出を依頼されたホームズが捜査を開始するという展開です。これ、説明書にしか書いてません。プレイ中ではまったく分からない設定です。
ロンドン市街(だって画面に書いてあるからそう思い込むしか!)から唐突にスタートし、中心部にいる角ばったレゴなみにドットの粗い探偵ホームズ。どうやらこいつが自機らしいと気付くのに、凡人少年は数秒かかります。
で、街を歩いてくるスパイやらぎゃんぐやら紳士やら婦人やら…とにかくありとあらゆる街ゆく人たちを蹴り倒し、ナイフで刺し、ピストルで撃っていきます。
コナミのがんばってるゴエモンでさえ、殴るとペナルティとなる女性キャラが町内を徘徊しているというのにですよ。
依頼者も被害者もほぼほぼゲーム内に登場せず、出てくる人は街の人(?)ばかりで、しかも当たるとダメージを受けて死にます。死にたくなければ殺れ!という、強制サバイバル。
そしておそらく無関係な人も、死とともに無理やり情報を聞き出すので、ゲームを進めるうえで ほしい情報が必ずしも手に入るわけではなく、なんなら必要情報かどうかも分からない、不愉快なテキストが表示されます。
何となく街中で入れそうなドア的なもの(もしくは暗闇的なもの)に飛び込むと、別の所にホッポり出されて、同じようにバッタバッタとだれかれ構わず顔を見られた者をなぎ倒し突き進むしかないのです。
そういえば、探偵は孤独なのでワトソンらしき人も一緒に捜査(操作でもいいんだけど)してくれなかったです(今さら)。2コントローラーは使いませんって説明書にご丁寧に書いてありましたから。
(実際は、2コン使用しないでクリアはできなかったらしいのですが)
むりくり突き進めて行くには体力回復アイテムも1個持てるくらいで、パワーアップはあったのかどうか怪しい。
ということで、ワープのような強制排出を繰り返してロンドンからどこかしらに飛ばされるという凶悪どこでもドアを使って物語を進めていくという、サバイバルというよりも忍耐ゲームになってきます。
結果、エンディング画面は1画面でスタッフロールが流れる程度らしいですが、凡人にはクリアに至らなかったゲームです。そもそもエンディングまでがんばれなかった…。
一般市民をばしばし蹴り殺してまわる英国紳士に出会えるファミコン時代の黒歴史です。
ちなみに、ファミコンにはちゃんと推理アドベンチャーゲームというジャンルの「名探偵ホームズ」も2作品ありますのでご安心を。
ただ、こちらに関しては逆に推理が難しすぎるというなかなか曲者なゲームとなっております。