Yesterday 世界で愛される英国のロックバンド
ただいま上映中の映画『Yesterday』を観てきました。
子供の頃、僕の家には大きなレコードプレーヤーがあり、その上でクルクルと回っていたLPはほとんどがビートルズでした。
親が大好きだったので、BGMとしてよく流れていたことを覚えています。
ただ息をしているだけの虫であったその頃の僕には、外人が歌っているレコードだという意識しかありませんでしたが、成長していく中でテレビで耳にする楽曲があの当時のLPから流れた曲だなと感じてはいました。
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『Yesterday』は世界で一番有名なロックバンド【ビートルズ】の存在が、主人公以外の記憶から全て消えてしまったというストーリーです。ビートルズの知名度があるからできたストーリーなのです。
そろそろ夢のあきらめ時を感じていた売れないシンガーソングライターの主人公・ジャックは、自分しか知らないビートルズの曲を使って、富と名声を手に入れようとします。
盗作であることに後ろめたさを感じながらも、絶対に世界中の人が惚れるビートルズの曲を世に発表していきます。予想通りあっという間に世界中で拡散し、彼は一気にスターとなる…。
※以下にはネタばれが含まれます。作品を観たい方は読まずに、観た方はあくまでも個人の思いとして読んでください。
~全世界の人が耳にしたことがある歌が、突然存在しなくなったら~
その理由はまったく語られることはなかったのですが、作品として素晴らしい構成だったと思います。
幼少期聴いた曲が2時間の作品中にバンバン流れるのは、先日大ヒットを記録した『ボヘミアン・ラプソディ』と同じなのですが、実在した人を追う史実ストーリーじゃなくて、別の主人公を立てて曲を出すという手法が僕としてはとてもスマートでした。
まず見た目を似せる必要がなくなるので、
「えー、似てない!」
と思ってしまってハードルを上げることがなくなります。
作品中にはジョン・レノン(らしき人)が出てきます。彼らの世界にはビートルズは存在していないので、ジョンは暗殺されることなく船乗りとしての人生を送り、幸せな余生を過ごして78歳の姿で登場します(もちろん雰囲気は似てる人を起用しますが、これは想像の世界です)。
この手の作品で一番便利なのは、ストーリーとともに流れるさまざまな曲は、訳された歌詞が字幕で出てくれます。
心情を当てはめて曲を選んでいるから当たり前なのですが、理解しやすくてありがたい!
憧れているだけで全く英語からかけ離れた人生を送っている超日本人の僕には、とてもありがたいのです。
わざわざ歌詞カードを捲っていた時代とは違うんだなぁ。
全ての人からその存在が失われた世界で、ジャック以外にたった二人だけ、【ビートルズ】を知る人が彼に会いにやってきます。逮捕されることまで覚悟していたジャックでしたが、二人は盗作を咎めることなくジャックに感謝してくれました。
「彼らが存在しない世界はとてもつまらない。楽曲をこの世界に残してくれてありがとう」
世界一有名なバンドを愛してやまない国の人たちの、とても優しい言葉です。
~普通に在るものが、もしも無くなってしまったら~
このテイストだけで製作され始めると、無限の題材で出来てしまいそうです。
実際、世界から消えてしまったのはビートルズだけでなく、【ハリー・ポッター】も無くなっていました。が、主人公の人生にはさほど影響なかったようです。
物語の結末は、ジャックの世界においてやはりビートルズは存在しなかったけどハッピーエンドでした。彼は音楽活動をする前職の学校の教師に戻り、子供たちにビートルズの曲を教えて幸せに暮らします。
子供達とOb-La-Di, Ob-La-Daを歌うシーンは、笑顔になってしまいます。
愛され続ける音楽の偉大さと幸せの有り方を見せる作品の題材としてビートルズという題材のチョイスがとてもスマートでした。
とことんまで追い詰められてからの圧倒的で劇的な復活を成し遂げる作品よりも、僕としては見ごたえあったし、近年でいうと上位ランクの映画となりました。
影響されるとすぐに…ということで、即効でヘビロテしてます。
しばらく頭の中はずっと床屋さんと消防士のしか出てこないだろうなぁ。