凡人が憧れて4
英国紳士に憧れた凡人は、それはそれはなりふり構わず、なのです。
まずはそのへんにあるホームズをすべて物色し始めます。
一冊に簡略でまとめられた本ですが、訳がひどくて読み続けられませんでした。
しかし全話一応収められています。
会話の部分で小さく攻防を繰り返すワトスンvsホームズ、またはレストレードvsホームズなどなど、信頼関係があるからこそこのやりとりが成立するのにという部分が伝わってこなかった書籍ではあります。残念。
しかし、パジェットの挿絵が瞬時に拾えるというのはこの本一冊だけ持っているのも価値があります。
元来のコンプリート体質が災いして大全を購入した僕は、
今度はパジェットに憧れ始め一本の鉛筆、もしくはペン先だけで濃淡を出すような、当時の挿絵風の画力を求めて行きます。
一体何がしたかったのか今では謎ですが、どうやらホームズ先生を自分で動かしたかったのです。
パジェットの挿絵が自在に描けるようになれば、ジェレミー・ホームズが自ずと描ける!
どこかで信じていたのでしょう。
授業中も勉強などせず、一心不乱にホームズ先生を書いておりました。
肘を抱えて座る、考える姿勢のあの画
指を付き合わせて、瞑想に入るあの画
ロンドンの犯罪者の無能さに憤慨して、腕にいろいろと射ってしまうあの画
実際のものを写すように描き、更に妄想を加えて描き、好きなシーンを描き上げる。
凡人の行動はときに周りの人の理解を超えるようです。
余談ですが、
パジェットの挿絵で忠実に描いて楽しかったのは、「ボヘミアの醜聞」で登場した高貴な紳士とマイクロフトです。
どんなに忠実に描いても、モリアーティ教授だけはおどろおどろしさが出ませんでした。すごいぞ、パジェット!
そして妄想で描いて一番楽しかったのは、
グラナダ・ホームズの「唇のねじれた男」の回で、もっしゃもしゃのスポンジを使って相手の顔の汚れを落とすシーンです。
特に水分をたっぷりと含ませた泡だらけのスポンジを相手に見せつけながら、持ち上げて水をバシャバシャこぼすシーン。
どSブレットがとても出ていて、描いててむちゃくちゃ楽しかったです。