英国紳士に憧れて

格好いい英国紳士になるべく、日々の精進と思いをつむいで。主にホームズについて。

英国紳士を考察1 「犯人は二人」

理想とする英国紳士は、

正直いろいろな犯罪に手を染めることも厭わないときがあります。

厭えよと思うことも、やっちゃいます。だって原作がそうなんだから、忠実をモットーにしているグラナダ版だって、やっちゃいますよね。

 

原題「The Adventure of Charles Augustus Milverton」

『犯人は二人』と日本では訳される事が多いですが、原題は登場人物の名前です。

ドラマ版タイトルは「The Master Blackmailer(恐喝王)」

 


シャーロック・ホームズの冒険 完全版 Vol.19 [DVD]

登場するチャールズ・オーガスタス・ミルバートン(パッケージは役/ロバート・ハーディ。余談ですが、もちろん挿絵とそっくりなのは言うまでもありません)は、恐喝王として名誉ある貴族や高貴な方達、その夫人や夫人候補の婚約者達を、良きタイミングでゆするネタ(主に手紙)を、お屋敷の御者や小間使いなどから高額に買い取って私腹を肥やしている人間です。

表だっては新聞に載ることはないとしても、彼の恐喝によって紙面はスキャンダル欄は婚約破棄や自殺など、彼が関わったに違いない記事が載ります。

そしてホームズは、ワトソンと共にこの警察からも巧みに逃げ惑う犯人を追い込むために捜査を始めるのです。

 

さて、こちらの作品ですが英国紳士らしからぬ事をホームズ先生はします。

グラナダ・ホームズではもちろん実写化されるので、再現度が忠実である分、ファンにとっては衝撃映像となりました。

我らがホームズ先生が悪漢をこらしめるためにした所業は、

・結婚詐欺

・不法侵入

・犯人蔵匿

・証拠隠滅

などなど。

えーと、ほかにもいろいろやってます。ジェレミー・ホームズがやるってことでなかなかにリアルなのです。

原作通り、ホームズが敵の御屋敷の情報を得るためだけに、仕えるメイドと結婚の約束をし、それをワトソンに伝えます。

「いくらなんでもやりすぎだよ。女性がかわいそうだ」とワトソンは言いますが、情報のために仕方なかったとホームズはあくまでドライです。

そしてドラマではジェレミー・ホームズはメイドとのキスシーンまで披露しました。まさに禁断。

 

 

 

このシーンは興味深かった。

シャーロックの性衝動については秘密とされていたが、

我々はこれを破りたいと考えた。

 

 

 

のちのジェレミー本人の言葉は、明らかに世界各地からの反響がすごかったのだと知らされます。

NHK版ではカットされたシーンで、メイドとイチャイチャするだけで終わってます)

 

何度か不法侵入と窃盗に加担したり、犯人を見逃したりを一緒にしていたワトソンですが、今回ばかりは怒ります。ベーカー街で大喧嘩です。

…結果として手伝ってしまう助手は、最終的には音のしない靴を持ってきたり覆面用のマスクはあらかじめ用意したりといつのまにやらすっかり手慣れて(?)います。

 ちなみに、原作ではホームズがワトソンの同行に反対し、自分だけで行うと主張するのですが、「だったら君も行かせないよ」とワトソンが食ってかかる喧嘩となっています。

 

そして恐喝の材料に使われる手紙を盗み出すため、

怪盗ホームズ一味はミルバートンの書斎に窓ガラスを丸く切り取って侵入、道具を駆使して金庫を破り、依頼者の心痛の原因となる手紙を探します。けなげにドアの前に立ち、見張り役をするワトソン博士の汗が視聴者にも緊張感を伝えてきます。

 

その時、書斎の主が戻ってきてしまいます。間一髪でカーテンの陰に隠れた二人は、ミルバートンがベールで顔を隠した女性と面会する場面に遭遇します。

良家に仕えるメイドがまた主人の脅しのネタを持ってやってきたと思っていた恐喝王は相手を快く迎え入れますが、その女性はメイドではなく、かつて自身の手で人生を破滅させた女性でした。

女性は銃弾を何発も恐喝王の心臓に打ち込み、なんならヒールで彼の顔を踏みつけて部屋から去っていきます。

 

すべての事の発端の犯人は恐喝王であるミルバートン。

そして部屋に来た女性は過去の復讐と、これからも繰り返されるであろう悲劇を食い止めるために、ミルバートンの殺害犯となりました。

 

「犯人は二人」

 

そのシーンを目撃したホームズ一味は、銃声で起こされた屋敷の執事たちが部屋に入ってくる前に、恐喝のネタをすべて暖炉にくべて灰にし、逃走します。

途中、お屋敷の庭で追跡してきた使用人に捕まりそうになりますが、何とか逃げ切りました。

 

原作ではここで、ベーカー街にレストレード警部が登場。

「ホームズさん向けの事件が起こりましたよ。屋敷の者があと少しのところまで追い詰めたのですが…『犯人は二人』です」

犯人の特徴がよくありすぎて「まるでワトソン君とそっくりだよ」とホームズがいい笑い話にしてますが、そのシーンはドラマにはありませんでした。

 

ミルバートンはとにかく悪人ですが、アウトレイジばりにだれもが悪人くらいの話。

ドラマでは最後に手記を書きとめようとするワトソンをホームズが「誇れるものではない」とそれを制します。

こんなに犯罪重ねといて、その一言でやっぱり「英国紳士」を思わすエンディング。

本当の犯人は、ジェレミー本人と、確信犯で悪いホームズも演じられるジェレミー・ホームズなんじゃないかと、そんなことを考察します。

 


#33 犯人は二人